末代の僧尼について

末世には狗犬の僧尼は恒沙の如しと仏は説せ給て候也。文の意は末世の僧、比丘尼は名聞名利に著し、上には袈裟、衣を著たれば形は僧、比丘尼に似たれども内心には邪見の剣を提て、我出入する檀那の所へ余の僧尼をよせじと無量の讒言を致し、余の僧尼を寄せずして檀那を惜まん事、譬ば犬が前に人の家に至て物を得て食ふが、後に犬の来を見ていがみほへ食合が如くなるべしと云心也。是の如の僧尼は皆皆悪道に堕すべき也。
『松野殿御返事』

 第三に衆合地獄とは、黒縄地獄の下にあり。縦広は上の如し。多くの鉄の山、二つずつ相向かえり。牛頭・馬頭等の極卒、手に棒を取って罪人を駈けて山の間に入らしむ。此の時、両の山迫り来て合わせ押す。身体くだけて、血流れて、地にみつ。又種々の苦あり。人間の二百歳を第三の夜摩天の一日一夜として、此の天の寿、二千歳なり。此の天の寿を一日一夜として、此の地獄の寿命、二千歳なり。殺生・偸盗の罪の上、邪淫とて、他人のつま(妻)を犯す者、此の地獄の中に堕つべし。然るに当世の僧尼士女、多分は此の罪を犯す。殊に僧にこの罪多し。士女は各々互いにまもり、又人目をつつまざる故に、此の罪をおかさず。僧は一人ある故に、淫欲とぼし(乏)きところに、若しはらまば(有身)、父ただされてあらわれぬべきゆえに、独りある女人をばおかさず。もしやかくる(隠)ると、他人の妻をうかがい、ふかくかくれんとおもうなり。当世のほかとうと(貴)げなる僧の中に、ことに此の罪又多かるらんとおぼゆ。されば多分は当世とうとげなる僧、此の地獄に堕つべし
『顕謗法鈔』

 仏涅槃経に記して云く_末法には正法の者は爪上の土、謗法の者は十方の土とみえぬ。法滅尽経に云く_謗法の者は恒河沙、正法の者は一二の小石と記しおき給う。千年・五百年に一人なんども正法の者ありがたかるらん。世間の罪に依て悪道に堕ちる者は爪上の土、仏法によて悪道に堕ちる者は十方の土。俗より僧、女より尼多く悪道に堕つべし
『開目抄』

 しかればいまの代の海人山人日々に魚鹿等をころし、源家平家等の兵士等のとしどしに合戦をなす人々は父母をころさねばよも無間地獄には入り候はじ。便宜候はば法華経を信じて、たまたま仏になる人も候らん。今の天台座主・東寺・御室・七大寺の検校・園城寺の長吏等の真言師竝に禅宗・念仏者・律宗等は、眼前には法華経を信じよむににたれども、其の根本をたづぬれば弘法大師・慈覚大師・智証大師・善導・法然等が弟子也。源にごりぬれば流れきよからず。天くもれば地くらし。父母謀反をおこせば妻子ほろぶ。山くづるれば草木たふるならひなれば、日本六十六ヶ国の比丘比丘尼等の善人等皆無間地獄に堕つべき也。
 されば今の代には地獄に堕つるものは悪人よりも善人、善人よりも僧尼、僧尼よりも持戒にて智慧かしこき人々の阿鼻地獄へは堕ち候也
『種種物御消息』

三千大千世界の一切衆生の人の眼をぬける罪よりも深く、十方世界の堂塔を焼はらへるよりも超たる大罪を、一人して作れる程の衆生日本国に充満せり。されば天は日日に眼をいからして日本国をにらめ、地神忿を作して時時に身をふるう也。然而我朝の一切衆生は皆我身に科なしと思ひ、必ず往生すべし成仏をとげんと思へり。赫赫たる日輪をも無目者は見ず知らず。譬ばたいこ(鼓)の如くなる地震をもねぶれる者の心にはをぼえず。
日本国の一切衆生如是。女人よりも男子の科はをゝく、男子よりも尼のとがは重し。尼よりも僧の科はをゝく、破戒の僧よりも持戒の法師のとがは重し。持戒の僧よりも智者の科はをもかるべし。此等は癩病の中の白癩病、白癩病の中の大白癩病なり。
『妙法曼荼羅供養事』

今、当世の悪王・悪比丘の仏法を滅失するは、小を以て大を打ち、権を以て実を失ふ。人心を削りて身を失はず、寺塔を焼き尽くさずして自然に之を喪ぼす。其の失前代に超過せる也。
『法華取要抄』

設ひ堅く三帰・五戒・十善戒・二百五十戒・十無尽戒等の諸戒を持てる比丘・比丘尼等も、愚痴の失に依て、小乗経を大乗経と謂ひ、権大乗教を実大乗経なりと執する等の謬義出来す。大妄語・大殺生・大偸盗の大逆罪の者也。愚人は之を知らざれば智者と尊む。設ひ世間の諸戒之を破る者なりとも、堅く大小権実等の経を弁へば、世間の破戒は仏法の持戒也。
『大学三郎御書』

 経に云く_悪世中比丘 邪智心諂曲 未得謂為得 我慢心充満〔悪世の中の比丘は 邪智にして心諂曲に 未だ得ざるを為れ得たりと謂い 我慢の心充満せん〕文。妙楽大師此の文の心を釈して云く ̄次一行明道門増上慢者〔次いで一行は道門増上慢の者を明かす〕文。文の心は悪世末法の権経の諸の比丘、我れ法を得たりと慢じて法華経を行ずるものゝ敵となるべしといふ事也。
『唱法華題目鈔』

末世の僧等は仏法の道理をばしらずして、我慢に著して師をいやしみ、檀那をへつらふなり。
『曾谷殿御返事(成仏用心鈔)』

法滅尽経に法滅尽之時は狗犬の僧尼、恒河沙の如し等云云[取意]。
『曾谷入道殿許御書』

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