地涌千界の菩薩とは

地涌千界の大菩薩大地より出来せり。釈尊に第一の御弟子とおぼしき普賢・文殊等にもにるべくもなし。華厳・方等・般若・法華経の宝塔品に来集せる大菩薩、大日経等の金剛薩こんごうさっタ等の十六の大菩薩なんども、此の菩薩に対当すれば・猴{みこう}の群中に帝釈の来たり給うがごとし。山人に月卿等のまじわれるにことならず。補処の弥勒すら猶お迷惑せり。何に況んや其の已下をや。

『開目抄』

此の本門の肝心南無妙法蓮華経の五字に於ては、仏、猶お文殊・薬王等にも之を付属したまはず。何に況んや其の已下をや。但地涌千界を召して八品を説いて之を付属したもう
<中略>
本門の一菩薩を、迹門の十方世界の文殊・観音等に対向すれば、猿猴を以て帝釈に比するに、尚お及ばず。
<中略>
地涌千界の菩薩は己心の釈尊の眷属也。
<中略>
末法の初めは謗法の国、悪機なる故に之を止め、地涌千界の大菩薩を召して、寿量品の肝心たる妙法蓮華経の五字を以て閻浮の衆生に授与せしめたもう也。
<中略>
本門の四依地涌千界は末法の始めに必ず出現すべし。今の遣使還告は地涌也。是好良薬とは寿量品の肝要たる名体宗用教の南無妙法蓮華経是也
<中略>
地涌千界は正像に出でざるは、正法一千年之間は小乗・権大乗也。機時共に之無し。四依の大士、小権を以て縁と為して在世の下種之を脱せしむ。謗多くして熟益を破るべき故に之を説かず。例せば在世の前四味の機根の如し也。像法の中末に観音・薬王・南岳・天台等と示現し、出現して、迹門を以て面と為し、本門を以て裏と為して、百界千如・一念三千其の義を尽くせり。但、理具を論じて事行の南無妙法蓮華経の五字、竝びに本門の本尊未だ広く之を行ぜず。所詮、円機有って円時無き故也。
<中略>
今、末法の初め、小を以て大を打ち、権を以て実を破し、東西共に之を失し、天地顛倒せり。迹化の四依は隠れて現前せず。諸天、其の国を棄て之を守護せず。此の時、地涌の菩薩、始めて世に出現し、但、妙法蓮華経の五字を以て幼稚に服せしむ。因謗堕悪必因得益とは是也。我が弟子之を惟え。地涌千界は教主釈尊の初発心の弟子也。

『観心本尊抄』

地涌千界の大菩薩、一には娑婆世界に住すること、多塵劫なり。二には釈尊に随て久遠より已来初発心の弟子也。三には娑婆世界の衆生の最初下種の菩薩也。是の如き等の宿縁之方便、諸大菩薩に超過せり。
 問て曰く 其の証拠如何。
 答て曰く法華第五、涌出品に云く_爾時他方国土。諸来菩薩摩訶薩。過八恒河沙数。乃至 爾時仏告。諸菩薩摩訶薩衆。止善男子。不須汝等。護持此経〔爾の時に他方の国土の諸の来れる菩薩摩訶薩の八恒河沙の数に過ぎたる。乃至 爾の時に仏、諸の菩薩摩訶薩衆に告げたまわく、止みね、善男子、汝等が此の経を護持せんことを須いじ〕等云云。
<中略>
弥勒菩薩の瑜伽論に云く_東方有小国。其中唯有大乗種姓 云云。慈氏菩薩、仏の滅後九百年に相当りて無著菩薩の請ひに赴いて中印度に来下して瑜伽論を演説す。是れ、或は権機に随ひ、或は付属に順ひ、或は時に依て権教を弘経す。然りと雖も法華経の涌出品之時、地涌の菩薩を見て近成を疑ふ之間、仏、請ひに赴いて寿量品を演説し、分別功徳品に至りて地涌の菩薩を勧将して云く_悪世末法時 能持是経者と。弥勒菩薩、自身之付属に非ざれば、之を弘めずと雖も、親り霊山会上に於て悪世末法時之金言を聴聞せし故に、瑜伽論を説く之時、末法に日本国に於て地涌の菩薩、法華経の観心を流布せしむべき之由、兼ねて之を示す也

『曾谷入道殿許御書』

 今末法に入りぬ。地涌出現して弘通有るべき事なり。今末法に入て本門のひろまらせ給ふべきには、小乗・権大乗・迹門の人々設ひ科なくとも又彼々の法にては験有るべからず。

『富木入道殿御返事』

日蓮と同意ならば地涌の菩薩たらんか。地涌の菩薩にさだまりなば釈尊の久遠の弟子たる事あに疑はんや。経に云く「我従久遠来教化是等衆」とは是れなり。末法にして妙法蓮華経の五字弘めん者は男女はきらふべからず。皆地涌の菩薩の出現にあらずんば唱へがたき題目なり。日蓮一人はじめは南無妙法蓮華経と唱へしが、二人三人百人と次第にとなへつたふるなり。未来も又しかるべし。是あに地涌の義にあらずや。
『諸法実相鈔』

此の五字(妙法蓮華経)を地涌の大士を召出して結要付属せしめ給ふ。是を本化付属の法門とは云ふ也。
『曾谷殿御返事(成仏用心鈔)』

地涌千界出現して濁悪末代の当世に別付属の妙法蓮華経を、一閻浮提の一切衆生に取り次ぎ給ふべき仏の勅使なれば、八十万億の諸大菩薩をば止ね善男子と嫌はせ給ひしか等云云。
『教行証御書』

されば末法に此経(法華経)をひろめん人人、舎利弗と迦葉と観音と妙音と文殊と薬王と此等程の人やは候べき。二乗は見思を断じて六道を出でて候、菩薩は四十一品の無明を断じて十四夜の月のごとし。然れども此等の人人にはゆずり給はずして地涌の菩薩に譲り給へり。
『四条金吾殿御返事(必仮心固神守則強書)』

末法闘諍堅固の時、地涌出現し給ひて本門の肝心南無妙法蓮華経の弘まらせ給ふべき時を知て、恋させ給ひて如是釈を設けさせ給ひぬ。
『妙一女御返事』

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