闡提とは、天竺の語、此には不信と翻す。不信とは、一切衆生悉有仏性を信ぜざるは闡提の人と見えたり。不信とは、謗法の者なり。
『顕謗法鈔』
凡そ謗法とは、謗仏謗僧也。三宝一体なる故也。是れ涅槃経の文也。爰を以て法華経には則断一切 世間仏種〔則ち一切世間の 仏種を断ぜん〕と説く。是れを即ち一闡提と名づく。
『真言見聞』
たといさとりあれども信心なき者は誹謗闡提の者也。
<中略>
総じて成仏往生のなり難き者四人あり。第一には決定性の二乗・第二には一闡提人・第三には空心の者・第四には謗法の者也。此れ等を法華経において仏になさせ給う故に法華経を妙とは云う也。
『法華題目抄』
天親菩薩の仏性論の第一に此の文を釈して云く ̄若憎背大乗者此是一闡提因。為令衆生捨此法故〔若し大乗に憎背するは、此れは是れ一闡提の因なり。衆生をして此の法を捨てしむるを為ての故に〕
<中略>
末法に於ては常没の闡提之多し。豈に観経等の四十余年の諸経に於て之を扶くべけん乎。無性の常没・決定性の二乗は、但法華・涅槃等に限れり。
<中略>
法華経は諸経に漏れたる愚者・悪人・女人・常没の闡提等を摂したもう。
<中略>
又云く_不作一闡提 断不善根 信如是等涅槃経典 如爪上土 乃至 作一闡提 断諸善根 不信是経者 如十方界所有地土〔一闡提を作らず、善根を断ぜず、是の如き等の涅槃経典を信ずるは爪上の土の如く 乃至 一闡提と作り、諸の善根を断じ、是の経を信ぜざるは十方界所有の地土の如し〕と。
此の文の如くんば法華・涅槃を信ぜずして一闡提と作るは十方の土の如く、法華・涅槃を信ずるは爪上の土の如し。
<中略>
法華・涅槃に於て不信の思いを作し、一闡提と作り、観経等の下劣の乗に依て方便称名等の瓦礫を翫び、法然房の猿猴を敬うて智慧第一の帝釈と思い、法華・涅槃の如意珠を捨て、如来の聖教を褊するは権実二教を弁えざるが故也。
<中略>
我等常没の一闡提の凡夫、法華経を信ぜんと欲するは仏性を顕さんが為の先表也。
『守護国家論』
涅槃経に云く_仏言 唯除一人余一切施 誹謗正法 造是重業 唯除如此一闡提輩 施其余者一切讚歎〔仏の言く 唯一人を除きて余の一切に施さば 正法を誹謗し、是の重業を造りて 唯此の如き一闡提の輩を除きて其の余に施さば一切讃歎すべし〕。此の文の如きんば、施を留めて対治すべしと見えたり。此の外にも、亦治方是れ多し。具さに出だすに段あらず。
『災難対治鈔』
又云く_殺有三謂下中上。下者蟻子乃至一切畜生。唯除菩薩示現生者。以下殺因縁堕於地獄畜生餓鬼具受下苦。何以故。是諸畜生有微善根。是故殺者具受罪報。中殺者 従凡夫人至阿那含是名為中。以是業因堕於地獄畜生餓鬼具受中苦。上殺者 父母乃至阿羅漢辟支仏畢定菩薩。堕於阿鼻大地獄中。善男子 若有能殺一闡提者則不堕此三種殺中。善男子 彼諸婆羅門等一切皆是一闡提也〔殺に三有り、謂く下中上なり。下とは蟻子乃至一切の畜生なり。唯菩薩示現生の者を除く。下殺の因縁を以て地獄・畜生・餓鬼に堕して、具さに下の苦を受く。何を以ての故に。是の諸の畜生に微の善根有り。是の故に殺さば具さに罪報を受く。中殺とは凡夫人従り阿那含に至るまで、是れを名づけて中と為す。是の業因を以て地獄・畜生・餓鬼に堕して、具さに中の苦を受く。上殺とは父母 乃至 阿羅漢・辟支仏畢定の菩薩なり。阿鼻大地獄の中に堕す。善男子、若し能く一闡提を殺すこと有らん者はち此の三種の殺の中に堕せず。善男子、彼の諸の婆羅門等は一切皆是れ一闡提なり〕
<中略>
即ち涅槃経に云く_仏言 唯除一人余一切施皆可讃歎。純陀問言 云何名為唯除一人。仏言 如此経中所説破戒。純陀復言 我今未解。唯願説之。仏語純陀言 破戒者謂一闡提。其余在所一切布施皆可讃歎獲大果報。純陀復問 一闡提者其義云何。仏言純陀 若有比丘及比丘尼優婆塞優婆夷発・悪言 誹謗正法 造是重業永不改悔心無懺悔。如是等人名為趣向一闡提道。若犯四重作五逆罪 自知定犯如是重事 而心初無怖畏懺悔不肯発露。於彼正法永無護惜建立之心 毀呰軽賎言多禍咎。如是等亦名趣向一闡提道。唯除如此一闡提輩 施其余者一切讚歎〔仏の言く 唯一人を除きて余の一切に施さば皆讚歎すべし。純陀問うて言く 云何なるをか名づけて唯除一人と為す。仏の言く 此の経の中に説く所の如きは破戒なり。純陀復言く 我今未だ解せず。唯願くは之を説きたまえ。仏、純陀に語りて言く 破戒とは謂く 一闡提なり。其の余の在所一切に布施するは皆讃歎すべし大果報を獲ん。純陀復問いたてまつる、一闡提とは其の義云何。仏の言く 純陀、若し比丘及び比丘尼・優婆塞・優婆夷有って、・悪{そあく}の言を発し、正法を誹謗し、是の重業を造りて永く改悔せず、心に懺悔無からん。是の如き等の人を名づけて一闡提の道に趣向すと為す。若し四重を犯し五逆罪を作り、自ら定て是の如き重事を犯すと知れども、心に初より怖畏・懺悔無く肯て発露せず。彼正法に於て永く護惜建立之心無く、毀呰軽賎して言に禍咎多からん。是の如き等を亦一闡提の道に趣向すと名づく。唯此の如き一闡提の輩を除きて其の余に施さば一切讃歎すべし〕と。
<中略>
早く一闡提之施を止め、永く衆の僧尼之供を致し、仏海之白浪を収め、法山之緑林を截らば、世は羲農之世と成り国は唐虞之国と為らん。
『立正安国論』
順次生に必ず地獄に堕すべき者は重罪を造るとも現罰なし。一闡提これなり。
<中略>
上品の一闡提の人になりぬれば、順次生に必ず無間地獄に堕つべきゆえに現罰なし。
『開目抄』
仏法には五逆をたすけ、不孝をばすくう。但し誹謗一闡提の者、持戒にして大智なるをばゆるされず。
『撰時抄』
仏性論に云く ̄若憎背大乗 此是因一闡提。為令衆生捨此法故〔もし大乗に憎背するは、此れは是れ一闡提の因なり。衆生をして此の法を捨てしむるをもっての故に〕。此の文の如きんば、大小流布之世に、一向に小乗を弘め、自身も大乗に背き、人に於ても大乗を捨てしむる、是れを謗法と云ふ也。
『十法界明因果鈔』
雙林最後の涅槃経に、十悪・五逆よりも過ぎてをそろしき者を出させ給ふに、謗法闡提と申して二百五十戒を持ち、三衣一鉢を身に纏へる智者共の中にこそ有るべしと見え侍れと、こまごまと申して候ひしかば、此の人もこゝろえずげに思ひておはしき。
『善無畏三蔵鈔(師恩報酬鈔)』
今世既に末法にのぞみて諸宗の機にあらざる上、日本国一同に一闡提大謗法の者となる。
『妙法曼荼羅供養事』
提婆達多は閻浮第一の一闡提の人、一代聖教に捨て置かれしかども此経に値ひ奉りて天王如来の記別を授与せらる。
『波木井三郎殿御返事』
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