四箇格言まとめ(2)

与北条弥源太書 文永五年

去る月御来臨、急ぎ急ぎ御帰宅、本意無く存ぜしめ候ひ畢んぬ。
 抑そも蒙古国の牒状到来の事、上一人より下万民に至るまで、驚動、極まり無し。然りと雖も、何の故なること、人、未だ之を知らず。日蓮兼ねて存じせしむる之間、既に一論を造りて之を進覧せり。徴し先に達して顕れば、則ち災い後に来る。
 去る正嘉元年丁巳八月二十三日戌亥の刻、大地震。是れ併せながら此の瑞に非ず乎。
 法華経に云く_如是相と。天台大師云く ̄蜘蛛下喜事来、錢鵲鳴行人来〔蜘蛛下りて喜ぶこと来り、錢鵲鳴いて行人来る〕。易に云く ̄吉凶於動生〔吉凶、動に於て生ず〕と。此等の本文、豈に替わるべけん乎。所詮、諸宗の帰依を止めて一乗妙経を信受せしむ之由、勘文を捧げ候。
 日本亡国之根源は、浄土・真言・禅宗・律宗の邪法悪法より起これり。諸宗を召し合わせ、諸経の勝劣を分別せしめ給へ。
 殊に貴殿は相模の守殿の同姓なり。根本滅するに於ては枝葉豈に栄えん乎。早く蒙古国を調伏し国土安穏ならしめたまへ。
 法華を謗ずる者は三世諸仏の大怨敵也。天照大神・八幡大菩薩等、此の国を放ちたまふ故に、大蒙古国より牒状来る歟。自今已後各各生取りと成り、他国の奴と成るべし。
 此の趣、方方へ之を驚かし、愚状を進らせしめ候也。恐恐謹言。

文永五年戊辰十月十一日 日蓮 花押
謹上 弥源太入道殿

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